2023.03.18 Saturday

映画レビュー 『シン・仮面ライダー』(ネタバレ伏せ記事)

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    こんにちは、Ticoさんです。

    前から心待ちにしていて、実は昨日封切りだったのを知ったんですが

    チケ予約の関係で今朝の朝イチで見てきました。

     

     

    庵野監督のシン・仮面ライダーでありますよ!

    今回のこれの感想……とはいっても、ネタバレ無しで軽く綴りたく

     

    まず最初に言っておくと、Ticoはすごく楽しめましたし、

    映画見ててずっと飽きなかったし、ラストは爽快感半端なかったです。

     

    一方、ある方の感想ツイートで「割と怪作寄り」というのがあって、

    これも正直うなずけるところ。結構きわきわのバランスです。

     


     

    ありていに言えば、「シン・仮面ライダー」って、

    「シン・ゴジラ」や「シン・ウルトラマン」とは

    テーマのベクトルが思いっきり違うように感じたんですよね。

     

    「シン・ゴジラ」で描かれたのは、

    未曽有の災害に立ち向かう不屈の日本政府と、それを構成する人々。

     

    「シン・ウルトラマン」で描かれたのは、

    地球人に興味を持ち愛着を抱くウルトラマンと、仲間である禍特対との絆。

     


     

    では、「シン・仮面ライダー」で描かれたテーマは何か?

    これは百人百様の捉え方があるんですが、Ticoが感じたのは、

     

    ・どうあがいても逃れられない人の弱さ

    ・その弱さを踏まえて一歩前に進む時の勇気の理由

     

    こんなところを感じたんですよね。

    「シンゴジ」も「シンウル」も、

    出てくる人たちは、根本的に強い人たちなんですよ。困難に直面しても諦めない。

     

    対して、「シン・仮面ライダー」では、

    もっと生身の人が出てきたように思えます。

     

    それは仮面ライダーである主人公・本郷猛もそうですし、

    ヒロインの女性もそうですし、ショッカーの【怪人】達もそう。

     


     

    常人を超えた力を持ちながらも、人らしい感情や弱さを隠しきれず、

    時に荒ぶり、時におののきながら、諦める思い切りも持てず、

    もがくようにして、その時々を生きていく彼らが、

     

    何かを変えようと、一歩前に足を踏み出す時はなにか。

    人という弱き存在が、どんな理由で勇気を振り絞るのか

    そんな「弱さ」と「弱さから一歩先へ進む意志」が描かれていたように思います。

     


     

    その「弱さ」も登場人物それぞれなんですが、

    もとをたどっていくとすごく人間くさい、いかにもなものだし、

    「一歩踏み出す理由」も、それぞれ違っていてささやかなものだけど、

    だからこそ尊いんだと思いました。

     

    ヒロインの選択も、本郷猛の選択も、ラストの敵役の選択も、

    それぞれに意味があって、実に人間らしい理由でそうして、

    だからこそラストシーンの【彼】の台詞と行動に、

    爽快さと同時に熱いものを感じました。

     


     

    「シン・仮面ライダー」がどんな映画かは、

    予告編の動画が結構過不足なく描いてくれてるんですよね。

    怪獣も巨人も出ない、等身大の人間のドラマ。

     

    だからこそ、予告編を見て「合わないな」とおもった人は避けた方がいいし、

    「面白そう」と思った人は見に行って正解。

     

    そして、「どうしようかな」と迷ってる人こそ、

    ぜひ見に行ってほしいです。それだけの何かが残る作品です。

     

    Ticoは来週、友人ともう一度見に行ってきます。

     

    今日は一人で噛みしめていた感想を、

    気心知れた友人と今度は語れるのが今から楽しみです。

     

    2021.10.31 Sunday

    『アイの歌声を聴かせて』 ありそうな青春とSFのシンギュラリティ

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      こんばんは、Ticoさんです。

      ここ最近いろいろゴタゴタしていて、

      それも先週末で片付いたかなとか考えていたんですが、

      木金とダウンして寝込んだり、アレかな、心労ですかね。

      なかなか人生ままならないものですが、なんとか荒波を乗り越えていきたい……

       

       

      さて、本日のブログ記事は

      「『アイの歌声を聴かせてありそうな青春とSFのシンギュラリティ

      と題して、この金曜日から封切りになったアニメ映画の感想など。

      監督は吉浦康裕さん、『イヴの時間』からずっと大好きな監督さんです。

      あ、上映開始から間もないのでネタバレ無し感想でまいりますよ

       

       

      内容は、シオンと呼ばれるAIロボットを軸に

      高校生の子たちが織り成す恋とか友情とかの青春ドラマではあるんですが――

      その実、人工知能のシンギュラリティや、AIとヒトとのコミュニケーションを通じて、

      愛とか幸せとかって何かをクライマックスでどどーんと描いてみせてます。

       

      ええ、この作品、ありがちな青春SFドラマに見せかけていて、

      実はすごいテーマをさらっと脚本に織り込んで破綻なく見せている逸品なんですよ。

       

      【主人公と言える少女ミサトと、ヒロインであるシオンがお話の主軸です】

       

      お話の舞台が面白い。どこかの結構な田舎町なんですが、

      企業が自治体巻き込んでAI活用の実証実験を行っている、という形になっています。

      このAIがごく自然に生活に馴染んでいる描写がとてもユニーク

       

      AIといっても、スマートスピーカーとかの発展系なんですよな。

      主人公のミサトが住んでいる家は結構古めの民家ではあるんですが、

      玄関は生体認証式っぽいスマートロックが後付けされていたり。

      あと、水田には田植えロボがいるんですが、田植え機の自動化じゃなくて、

      人型ロボットが手植えしてるあたりが少しユーモラス

       

      「あー、いかにもありそう」って感じの馴染み方が面白いのですが、

      そういう環境にすこんと放り込まれるのが、実証実験用のAIロボット、シオンです。

       

      【このシオンを演じている土屋大鳳さんの演技が本当に素晴らしいんですよ】

       

      ミサトの母親はAI研究者なのですが、極秘に「人と変わりない振る舞い」ができる

      人工知能を実証実験しよう学校に送り込んだのがシオンなんですな。

       

      ところがこのシオンがとんでもない行動をおっぱじめるんですよ。

      クラスに「転校」してきて、本来なら自己紹介するところ、

      いきなりミサトに「いま、幸せ?」と訊ねたり、急に目の前で歌いだしたり。

       

      このね、シオンを演じている土屋大鳳さんの演技が本当に素晴らしくて

      明るくて溌剌、天真爛漫なようでいて、どこか平板で無機質さを感じなくもない

      シオンの声をちゃんと演じつつ、歌のシーンになると見事な歌唱力を披露

      明るくカワイイ女の子ってだけじゃなく、「あ、言われたらどこかロボットっぽい」という

      ギリギリの虚実皮膜の声をあてられていて本当に上手い。

       

      【シオンの突拍子のない振る舞いに、ミサトたちは戸惑うのですが――】

       

      実のところ、シオンがAIロボットだというのは作品の冒頭から観客には知らされていて、

      かつ、ミサトを取り巻く同級生たちにもロボバレするのは結構序盤です。

       

      ただ、そこからミサトたちを巻き込んで、シオンを仲立ちに人間関係がよくなっていく

      その流れは本当にホッコリ。

       

      でも、単に「ロボットが天使になって幸せを運んできた」お話じゃないんですよ、これ。

      終盤1/3からはお話が急展開して、一気に伏線回収をしていきます。

       

      なぜシオンはミサトに「幸せ?」と聞いたのか。

      なぜシオンは人と人の仲立ちをするときに歌ってみせるのか

      なぜシオンはミュージカルっぽい演出をしてみせるのか。

       

      そのあたりの「なんで?」という理由が怒涛のように明らかにされていき

      そして、その理由が「なるほどな!」とすとんと腑に落ちるものなんですよ。

      ……これ、SFの素養がある人ほど納得できると思う。お約束のひとつなんです。

       

       

      クライマックスの大立ち回りは、いかにも青春ドラマな展開ながら、

      窮地のシオンを救おうとミサトたちが奮闘する流れに手に汗握り、

      そして最後の結末になんとも晴れ晴れとした気持ちになります。

       

      途中、シリアスな展開はあるんだけど、胸を切なくさせる系じゃないんですよね。

      最後の最後に、本当にすがすがしい気持ちにさせてくれる映画です。

      AIが持つシンギュラリティの可能性、それは決して怖いものじゃなく、

      むしろヒトとのコミュニケーションにおいて良いものになるんだよ、

      という監督のメッセージを受け取った気もします。

      (このあたり、『イヴの時間』でも共通のテーマですね)

       

      ありきたりなキラキラした青春ドラマに見えますが、

      その実、恋愛や友情にはそれなりにどろどろしたわだかまりを見せつつ、

      でもそんな繋がりをシオンがハッピーに変えていく。

       

      そのシオン自身は最後にハッピーになれたのか、ハッピーを理解できていたのか。

      見終わって結構考えさせられる映画です。

      間口は広く見えるけど奥がけっこう深い、おススメの逸品ですよ!

       

      2021.07.17 Saturday

      『竜とそばかすの姫』 ネタバレ無し感想

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        こんばんは、Ticoさんです。

        ようやくおおさかも梅雨明けのようで、

        気温も高くてじっとりした夏本番がいきなり来ました。

        なんというか……もう少し手心を……

         

         

        さて、今回の記事は

        『竜とそばかすの姫』 ネタバレ無し感想」

        と題して、公開されたばかりの細田守監督最新作の感想など。

        なにせ金曜日に封切りになったばかりなので、

        ネタバレは控えつつ、感想を述べていきたいと思いますです。

         

         

        宣伝イラストを見ると「サマーウォーズ的美女と野獣なのかな?」って感じで

        あながち間違いでもないんですが、そう考えると足元すくわれますぞ、ってところ。

         

        ヒロインのベルが仮想空間「U」を堂々とパレードライブしながら

        華やかに歌い上げる冒頭のシーンから一転、

        そのベルの実体である少女、鈴の住む田舎の描写へと、

        それぞれ絵の密と圧がすごいのです。

         

        仮想空間「U」がCGっぽいいかにも不思議の国だとしたら、

        リアルの世界はのどかといえばのどか、自然だけは豊かな田舎です。

         

        敢えて線の調子と色遣いを鮮烈に使い分けてるのが、

        二つの世界を行き来するときのコントラストを際立たせています。

         

         

        ヒロインのベル=鈴もまた魅力的です。

        映画の冒頭では堂々たるディーヴァっぷりを見せるベルですが、

        その本体である鈴はといえば冴えない女子高生

         

        そんな鈴が現実世界で味わう孤独感

        自分には何も持っていないという鬱屈感

        過去のある出来事で大好きな歌を歌えないという挫折感

         

        そんな彼女が「U」の世界で華やかに変身し、

        一夜にして話題の歌姫として取り上げられるのは

        純粋にスター誕生のエピソードとして楽しめます。

         

        ただ、ベルであることは周囲には秘密のこと。

        仮装世界「U」では人は皆ある意味で自分を偽っているのですが、

        ここではいわゆる「身バレ」することが処刑宣告と同じ意味を持っています。

         

        このあたりの、現実でもありそうな切迫感と緊張感

        物語に上手く織り込まれていて、だからこそクライマックスでの

        盛り上がりにぐぐーっと収束していくあたりはお見事としか。

         

         

        さて、このお話がいわゆるラブロマンスかというと、

        ちょっと扱いが難しいところです。いえ、悪い意味ではなくて、ですよ?

         

        細田監督は名作『美女と野獣』をリスペクトしていて、

        本作はいわば細田版のそれだといえるんですが、ロマンスが主軸ではないんですよ。

         

        竜とベルの淡い恋物語は柱のひとつではあるんですが、

        ベル=鈴の青春の物語であり、成長の物語であり、

        ネットの世界の持つ可能性と危険性の縮図のお話であり、

        同時にリアルの繋がりの大切さを描きだしてもいます

         

        この作品、クライマックスの山場が二つある感じなんですが、

        上手くネットとリアルの繋がりがそれぞれに活写されていて、

        見ててなかなかに胸が熱くなってきます。

         

         

        思えば『時をかける少女』では、割と女の子のいい意味での生っぽさが出ていましたが、

        本作でもそのあたりは健在というか磨きがかかっていて

        この年頃の女の子、いや、若者だったら抱えているだろうあれこれを盛り込んでいます

         

        最初は魂の抜けたような表情だった鈴が、作中で少しずつ生気を感じさせる顔を見せつつ、

        山場での覚悟を決めた鬼気迫る顔つき、そしてエピローグでの晴れやかな顔!

         

        個人的には一周まわってきて、よきエンタメをおつくりになったな、という印象です。

        あとね、ベルの歌をはじめとして、楽曲が本当にいいんですよ。

        音楽と映像の見事な協奏を見るためにも映画館が絶対におススメでございます。

         

        途中ハラハラ山場ドカーン見終わった後の感覚は清々しいそんな映画です。

        この夏イチオシ、まさにオススメでございます。ぜひとも、劇場の大画面で!

         

        【PVも上手く作ってあるんですよ……ミスリードも巧みだなあ】

         

        【冒頭に流れる、いわば「U」のメインテーマ。この曲でビビッと来たら見に行く価値あり】

        2021.07.04 Sunday

        『シドニアの騎士 あいつむぐほし』 鑑賞後感想

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          こんばんは、Ticoさんです。

          やっと友人と映画だーと思ったら、

          当の友人が今朝になって熱を出してお休みになったので、

          ひさびさにソロ映画してきました。

          おひとりさまは苦ではないんだが、感想言える相手がいないと寂しい。

          そんでもってくだんの友人が心配です。ただの風邪ならええんですが。

           

           

          さて、本日の記事は

          「『シドニアの騎士 あいつむぐほし』 鑑賞後感想」

          と題して、やーっと劇場まで見に行くことができた、

          あのSFアニメの傑作、その完結編の感想でございます。

          多少ネタバレありなのはご容赦願いたい!

           

          だいぶ前に封切りしていて、実際、近日公開終了なんですが、

          そもそも緊急事態宣言下で週末に映画館が開いてない状態が長らく続き、

          こんな時期になってしもたがや。うう、シドニアファンとしてふがいない。

           

           

          キャッチがいいですよね。「身長差15メートルの恋」。

          実際、本作はハードSFであり、スペースバトルものでありますが、

          なによりもロマンスの王道を行くエンターテイメントでもあるのですよ。

          原作の二瓶先生がこんな作品描けるとはびっくりしたよなあ。

           

          簡単にあらすじを解説すると、謎の宇宙生命体「ガウナ」により

          地球を追われる羽目になった人類が、無数の播種船に乗って

          大宇宙へ当てのない旅へ出ることになって千年近く

           

          そんな播種船のひとつ、シドニアを舞台として、

          「衛人(もりと)」と呼ばれる宇宙戦闘機(ロボットぽいけど違う)の

          パイロットとして活躍する谷風長道という青年が主人公です。

           

          TVアニメは2期放映され、ポリゴンピクチュアズさんの手による

          3DCGアニメによる演技や動きがすごく自然であり、

          かつ宇宙空間での高機動戦闘が大迫力でございます。

           

          【長道と融合個体つむぎ、初の生身デートでございます。目うるうる】

           

          ■全体の感想

           

          映画公開前の宣伝文句では「コミック版の終わりは真の終わりではなかった!」とか

          銘打ってまた違う展開にするのかな、と思っていましたが

          案外、原作の流れにきっちり沿って映像化していましたね。

           

          尺の関係、多少削ったシーンやセリフはあった感じですが、

          そういう時は絵の迫力でドドンと見せてくるので気にはならなかったです。

          3DCGだけに絵がいかにも息づいている感がありまして、

          特に戦闘専用艦である水城艦隊の先鋭かつ獰猛なシルエットはクールでした。

           

          お話はガウナの大シュガフ船との戦いと、自己進化をもくろむ天才科学者落合との戦い

          入り乱れる感じになるんですが、主軸は長道とつむぎのロマンスが貫かれていて、

          そのうえで各人の視点での戦いを丁寧に描いているので、

          いかにも「シドニア総力戦!」という感じで白熱しましたねえ。

           

          バトルシーンバリバリではあるんですが、

          長道がつむぎと心通わすシーンはきちんと尺をとって描いていて

          当初は彼女の声や性格に、惹かれていた星白の面影を浮かべていた長道が、

          そのうちにつむぎ自体を愛するようになっていく過程がしっかり描かれています

          このね、二人のやりとりが本当によきかななんですよ。

          身長差15メートルなんて目じゃないんですよ。

           

          【映画冒頭では長道と一緒にお祭りに行くユハタとイザナですが……】

           

           

          ■脇役だって見せ場はしっかりある!

           

          TVアニメ2期では、長道と一緒の家で同居するユハタとイザナ。

          2期時点ではどっちも彼をある意味で狙っていたんでしょうけども、

          劇場版では少し様子が違っているんですよね。

           

          この劇場版、そもそもTVアニメ2期から10年経過してるという設定で、

          長道は凛々しくなってるし、ユハタとイザナもかなり女性らしくなってます。

          ただ、長道はどうもつむぎの方に目が行ってることが多いし、

          ユハタもイザナもそれに妬いたりしません。

           

          むしろ、ユハタとイザナが二人きりでいるカットでちょくちょく出てきて、

          「お?」となります。んで、そっと手を重ねたりするんですよな。

          その結果、お話のラストでは、ユハタとイザナがどうもくっついたらしい

          シーンがあるのは、漫画原作で知ってましたが……ユハタ、思い切ったよなあ。

           

          そんな二人、ユハタは水城艦隊の指揮官としてシドニアから離れて戦い

          イザナは観測班を率いて大シュガフ船の主本体を探ります

          このあたりの「それぞれの戦い」の見せ場がきちんと盛り込まれていて、

          映画全体を重厚な味わいにしてくれています。

           

          ほかにも新人たちも味があるし、小林艦長も人の情らしいところが出てるし、

          あと復活した(解放されたともいう)岐神がヒーロー覚醒したり

          仄シリーズの姉妹たちが見事なコンビネーション見せたり、と。

          ある意味で群像劇っぽい部分もあって、本当にいいんですよ。

           

           

          【見た目からして悪のラスボスなのはよくないですよ、落合さん】

           

           

          ■すべての始まり、狂気の天才科学者落合

           

          さて、劇場版まで見ていくと、なんだかんだで落合という天才科学者

          過去にやらかしたことがそもそも長道の出生や生い立ちに繋がっていたり、

          本作でもしぶとく生き残っていたために大波乱となったわけですが。

           

          ガウナと人間の融合生物を作ろう、とか、重力子発射装置を考えたり、とか

          たしかにブレイクスルーの点では天才だったんだろうなあ、と思います。

          イザナの祖母も大概な凄腕ではあるんですが、落合は次元が違うというか。

           

          作中では割とエゴと人類種保存をごっちゃにして都合よく振りかざしてますが、

          過去の回想ではララァことヒ山さんをなんとか延命しようと特製の保護服つくったり

          あのクマ着ぐるみって何だと思ったら、そんな設定があったという

          少なくともララァに措置をしている時の落合は、責任感と使命感の強い好人物に見えます

           

          まあ、それがどうしてあそこまで突っ走ってしまったのかというと、

          やはり深淵を覗き込みすぎてしまったのかな、と。

          今回、たぶん漫画原作に無いシーンとして、落合がガウナの正体をほのめかすシーンが

          あるのですが、その圧倒的なスケール感に呑まれちゃったのかなあ、と。

          なまじ理性的な人間だっただけに、それが暴走すると止められなかったのかも

           

          それで、結局、落合の敗因は「愛がわからなかった」ことな気がするんですよね。

          じゃないと、あのシーンで長道の地雷になる台詞を言うわけがない

          そのあたり、彼の洞察というか、理解の限界があったように思えます

          とはいえ、少なくともヒ山さんは最後まで彼をかばっていたんだよなあ。

           

          ただ、落合がいなければ、つむぎも生まれることはなかったわけですし、

          彼の発明した重力子射出砲がなければ大シュガフ船も倒せなかったわけです。

          ヒールではあるものの、功罪を測ると意外と難しい人物ですよね。

           

           

          ■終わりよければすべて良し

           

          最終的にレム星系の惑星セブンに入植して、

          長道も最終的には紆余曲折をへてつむぎと結ばれて子供を授かり、

          入植してから四年後に新装されたシドニアが、

          ユハタを新たな艦長に迎えて再び播種の旅に出ていくわけですが――

           

          これ、原作漫画だと、ガウナ由来の胞衣が惑星セブンを覆ったものの、

          地球に酷似した生態系を再現することになり、

          つむぎの「大丈夫です」の一言で入植が決定されるという筋書きでした。

          ある意味で、「シドニア人類はガウナに勝利し、そして和解した」とも

          取れる内容で個人的にかなり奥深い、と気に入っていましたが、

          そのあたりはこの劇場アニメではほぼ削られてましたね。

          (まあ、話がややこしくなるからという意図はわかる)

           

          ただ、それがなくても、ガウナから派生した生命体ともいえるつむぎが、

          最終的にヒトを模した体を手に入れて、ヒトである長道と結ばれて、

          子供を授かる、という関係性だけで充分表現してる気はします。

           

          最後は旅だったシドニアを星空の向こうに眺める

          長道とつむぎと、彼と彼女の娘という幸せな構図でして。

          王道といえば王道の終わり方で安心できると言えましょう。

           

          ……ところで二人の娘である長閑(のどか)は、また宇宙へ旅立つんでしょうなあ

          イザナとユハタがピンチと知ったらすっ飛んでいくよ。あの眉毛の力強さハンパないもの。

           

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          そんなわけで、「シドニアの騎士 あいつむぐほし」の鑑賞後感想でした。

          漫画版の原作もかなり情報密度が濃かったので、映画は心配してたんですが、

          きっちり110分の尺に上手く収めるだけでなく物語世界の広がりや

          人間関係というかシドニアの歴史を重厚に描き切った傑作でした。

          もうね、Ticoさんは後半ずっと涙うるうるしっぱなしでしたよ。

           

          アニメ版のシドニアが好きだった人はぜひ見に行って下さい!

          いやあ、もう劇場で見ないと損する勢いでございますよ、ホント!

           

          2021.04.11 Sunday

          『ガルパン 最終章』第3話 感想!(ネタバレあり)

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            おはようございます、Ticoさんです。

            先週は朝がつらくて平日は「ウボァ」となっておりましたが、

            さすがにこれではいかんとこの週末は朝日を浴びに散歩しています

            なかなか快適なんですが、さて何日続くかな……

             

             

            さて、本日のブログ記事は

            「『ガルパン 最終章』第3話 感想!(ネタバレあり)」

            と題してお届けします。公開から割と日が経ってるし、

            そもそも友人と見てきたのは先週日曜だったんですが、

            うん、まあ、すぐに感想書けなかったあたりホンマ絶不調やったんやな……

            タイトルにある通りネタバレご注意でございますぞ

             

             

            さて、第3話の前半は、まともな戦術に目覚めた知波単が

            軽戦車の強みを活かしてジャングル戦で大洗をひっかきまわす戦い

            決着がつくのですが……勝負がつくまでがもー手に汗握る展開で

             

            鬱蒼としたジャングルの中を爆走する戦車、

            視界の開けない中で突然の奇襲をしかける知波単、

            それを捌いていなしつつ勝機を探る大洗。

            どっちが勝つか分からない試合運びにハラハラでございます。

             

            試合開始から12時間経過というくだり、

            そもそも高校スポーツのレギュレーションじゃねえだろ

            とか思いますが、そこは突っ込んではいけない

             

             

            特にめざましかったのは劇場版の流れを受けて、

            知波単の知恵袋として開花した福田殿の冴えっぷりでしょう。

            わけても師匠と仰ぐ大洗バレー部チームことアヒルさんチームとの

            一騎打ちは、単なる師弟対決というにとどまらず

            「日本戦車どうしが戦ったらどんなバトルになる!?」

            というこれまた熱い展開でございますよ。

             

             

            一方、大洗の軍神こと西住どの、いや、あんこうチームも黙っていません

            みほさんに至っては戦車から完全に外へ出て戦況の把握をしてみたり。

            そして自分では夜目が利かないと判断するや、

            操縦手の麻子を指示役にすえて、秋山殿が操縦に、自身は装填手に。

             

            このあたりのあんこうチームのスペックの高さ、阿吽の呼吸こそ、

            まさにおそるべしなんでありますよな。

            だからこそ、も知波単の西隊長「あんこうを討ち取れば大洗は総崩れだ!」

            集中的に狙ってきて、その思惑は見事成し遂げたかに見えて、しかし――

            というのが知波単戦の流れでございました。

             

            前半戦見てるときは、ここの盛り上がりから、

            試合後のスッキリした空気へと見事に場面転換してたので流していたんですが、

            「あんこう=西住を狙え」って実は後半への重要な伏線だったんですな。

             

             

            そして大洗が次の試合で迎える相手は、

            なんとサンダースを破った継続高校。隊長はもちろんあのミカです。

            大洗も攪乱や陽動といった搦め手で勝ってきているチームですが、

            たぶんそっち方面でいえばミカ率いる継続高校は互角かそれ以上

             

            とはいえ、危機に陥ったあんこうチームは

            獅子奮迅の働きで追っ手を次々撃破するのですが……

            そこであの「魔女」のご登場ですよ。

            言われてみればフィンランドモチーフで出てこない方がおかしいんですが、

            よもやシモ・ヘイへの戦車兵バージョンとは恐れ入った。

             

            第三試合開始ほどなく撃破されたあんこうチーム。

            軍神の加護なくして大洗は勝てるのか!? というところで引き。

            いやー、ホントににくい演出しますわ

             

            ただ、お話上、「みほ抜きで大洗は戦えるのか?」って命題は気になっていたので、

            やるならこのタイミングしかないだろうとは思うんですが、

            それにしてもこの相手にそれをやるのか、ってあたりシナリオが魅せてくれますね

             

            才能の片鱗をたびたび見せている一年生チームの澤ちゃんが指揮するのか

            はたまたポンコツと揶揄された桃ちゃんが覚醒するのか

            Tico的には合わせ技で来ると思うんですが、もう制作陣に安心しかないので、

            きっと第4話では見事なドラマを見せてくれるでしょう。

            ……来年中には見れるとええんじゃが。

             

             

            あと、はずせないのが間違いなく決勝戦で大洗と当たるであろう、

            黒森峰のエリカですね。それまでの威風堂々とした黒森峰のスタイルから、

            一気呵成に攻め上げる機動戦術へ切り替えてプラウダをやぶったのは、

            なにかと西住流に囚われていた自分の殻を破った感があります。

             

            それはそうと「自分のやり方」で勝利をもぎとった時のエリカの顔がホントに可愛いんだ。

            この子、愛想がないクールフェイスに見えて、根っこはかなり違うのでは。

            彼女が先々、おそらく決勝戦でどんな采配と表情を見せるのかも楽しみですね。

             

             

            そんなこんなでガルパン最終書 第3話の感想でした。

            これ以外にホントに見どころいっぱい詰め込まれていて、

            いやー、ホントに面白さが結晶化している作品だな、と毎度思うわけです。

            未見の人はぜひぜひガルパンは本当にいいぞ!

             

            2021.03.09 Tuesday

            シンエヴァ完結編 見てきました (ネタバレ無し感想)

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              こんばんは、Ticoさんです。

              23時に上映が済んで映画館から帰宅して

              ひと風呂浴びてから、このブログを書いております。

               

              本日? いや、今夜のブログ記事は

              「シンエヴァ完結編 見てきました (ネタバレ無し感想)」

              と題してお届けします。

               

              いや、3時間近い長丁場なんですが、どの部分を切り取ってもネタバレになるし、

              なんだったらTL上には「感想のポジティブ度合いをみれば察せられる」とか

              あるぐらいでどないせいっちゃうんじゃというところなんですが。

               

               

              ただ、見終わってみると【鋭意制作中】の時に流れたキャッチコピー、

              「続、そして終。」「非、そして反。」は確かにその通りだったし、

              「すべてのチルドレンにありがとう」もその通りだったし、

              上記画像の「さらば、すべてのエヴァンゲリオン」もその通りでした。

               

              Tvアニメ版、旧劇版、新劇場版すべての続編でありリビルドであり、

              セルフオマージュでありつつ、同時にアナザーエピソードであり、

              ラストエピソードでもあり最後の「終劇」が実にしっくりきました。

               

              それだけ、本作自身の納得感と満足感がハンパなかった証左でもあります。

               

              いろいろケリがついてスッキリしたような反面

              結構大事なところで謎を残していたりして、いくらでも考察が尽きないのでしょうが、

               

              Ticoとしてはラストシーンのあれを見る時に、門出を見送る気持ちになりましたし、

              同時に「ああ、このお話はこれで終わっていいんだな」と納得感ありました

               

              そんなわけで、こんな感想自体がネタバレになってしまうといえばそれまでですが、

              20年以上前に「呪い」めいた何かをかけられてしまった人は、

              ぜひとも見に行くといいと思いますよいろいろ勇気をもらえます。これ、ホント。

               

              アクションもよし、ドラマもよし、絵もよし、謎めいた設定もよし。

               

              これぞエヴァンゲリオンであり、同時に、

              エヴァンゲリオンらしからぬ作品でした。

              オススメでございます。

               

              2020.10.31 Saturday

              劇場版 鬼滅の刃 無限列車編

              0

                こんばんは、Ticoです。

                本当は映画見終わって午後イチにすぐにブログ書きたかったのですが、

                昨晩寝不足だったのと、映画見終わってしばし放心状態だったので、

                落ち着くまでこんな時間になりました。上映時間中に4回も泣いたの初めてだよ!

                 

                 

                というわけで本日のブログ記事は、

                劇場版 鬼滅の刃 無限列車編

                と題してお届けしたいと思います。

                なんというかね、ネタバレありで語っても良い頃合いなんだろうけど、

                これについては敢えてネタバレ伏せで感想書いてみたいと思います。

                というのも、いろっいろ推し要素ありすぎて整理できんのが本音でして。

                 

                 

                映画のポスターが「悪夢を断ち切れ」とあるように、

                今回のメインの敵となる下弦の鬼は眠りと夢を操ってくる絡め手も絡め手。

                しかもそれだけじゃなく、なんともビックリ展開が待ち受けていて、

                たぶん「サイズ感」でいってもアニメ版通して最大じゃないでしょうか。

                 

                絵作りや演出がすごいのはもう言うまでもありません。

                本当にキャラが凄みのある良い表情するし、演出は勢いがほとばしっています。

                原作のちょっと残酷みあるテイストを損なうことなく、

                アクションものとしても珠玉の出来として作り上げた制作スタッフに敬礼!

                 

                さて、見どころは上げたらキリがないんですが、

                メインのキャラにスポットを当ててみていきましょう。

                 

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                ■炭治郎がやさしい。強いんだけど、それ以前にやさしい。

                 

                悪夢の罠から意識的に抜け出せたのは炭治郎なんですけど、

                そのために取らねばならん方法がすごく覚悟のいるモノでして。

                それをエピソード上、何度も何度も行う炭治郎、すさまじくガッツがあります。

                 

                でも、強いだけじゃないんですよ。

                自分を害そうとした人間(鬼の手先)は決して傷つけないし、気遣いさえする。

                斬るべきは鬼。守るべきは人。そのためなら自分がどんだけ痛くても我慢できる。

                 

                そんな彼の心象風景が描かれるシーンがあるんですが、本当に

                「ああ、いかにも炭治郎らしいな」と思った次第ですよ。

                鱗滝さんが「この子は優しすぎる」と評した通り、まず炭治郎は優しいんですよ。

                優しいからこそ、終盤でのあの台詞が出てくる。アレは本当によく言ってやりました。

                 

                 

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                ■禰豆子がかわいい。強いんだけど、その前にまずかわいい。

                 

                今回のエピソード、炭治郎の妹の禰豆子が箱の中に入ったまま列車入りしたことが

                思わぬ事態打開の鍵になりますこの子がいなかったらたぶん全滅しておったよ……

                 

                箱から出てきた禰豆子はちっちゃいサイズで仕草もいちいちカワイイ。

                思考は人よりも鬼よりになっているのですが、なんとなく兄をなんとかしようという

                振る舞いが動物っぽいというか、ちびっこっぽいというか。

                見ててほっこりします。しかし、血鬼術の「爆血」、便利ですね。

                 

                そんな禰豆子もクライマックスでは元のサイズに戻って肉弾戦で戦います。

                このパワフルな大立ち回りがなんとも爽快なんですよ!

                 

                ちなみに、ある限られた状況なんですが、禰豆子は普通(?)の台詞をしゃべるシーンもあって、

                このあたりの可憐さは本当に演じておられる鬼頭明里さんの実力発揮でございますね。

                だてに「虚構推理」のおひいさまをやってへんぞ、という。

                 

                 

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                ■下弦の鬼が卑怯。狡猾で卑劣で卑怯で、それでいてある意味規格外。

                 

                今回メインの敵役となる下弦の鬼。那田蜘蛛山の累と同格かそれ以上とあって、

                その戦力はまた半端ない上にびっくりどっきりの連続です。

                 

                炭治郎たちが立ち向かっても、これでもかこれでもかと

                驚きの展開を見せてくる上に苦しめる様子はたしかに本作の敵役にうってつけ。

                 

                ただ、手練手管と搦め手を尽くした攻撃をしのぎつつ、

                鬼狩りの面々が立ち向かって打ち破っていくのは見てて痛快であります。

                 

                 

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                ■煉獄さん、強い、かっこいい、めっちゃ兄貴かつ先輩……!

                 

                登場シーンは駅弁をドカ食いしながら「美味い!」を連呼する変人だし、

                当初の炭治郎との会話も、会話のように見えて自分をどんと押してくる人なんですが。

                 

                いざ戦闘となると一騎当千がふさわしい立ち回りぶり。

                炭治郎などとはまさに格が違う、そして炎柱の名にふさわしい苛烈な戦いぶりを魅せてくれます。

                煉獄さんが戦うシーンは、本作中で大きく三つあるんですが、

                そのどれもがカッコいいのですよ。

                 

                ですが、その煉獄さんも……煉獄さんも……!

                最後の戦いは余人のつけいる隙のない次元の異なるもので、

                いあわせた炭治郎はもちろん、観客のこちらも圧倒されます。

                 

                 

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                ■隠しボスがいるとか卑怯千万でございますよ!

                 

                列車に潜んでいた鬼を対峙して一件落着、

                深手を負った炭治郎を煉獄さんが助けてくれて、

                ほっとひと安心していたら……まさかの、ねえ。

                 

                このあたりは劇場で見届けてください。

                うん、本当にすごかったし、戦いの後で炭治郎が言ったセリフもよかった。

                見どころがありすぎるし、ホントに言葉を尽くしても足りないほどです。

                 


                 

                そんなこんなで、ラストに「ちらっ」した気がしますが、

                ネタバレ伏せつつ、映画の感想を記事にしてみました。

                 

                やーあ、たぶん年末までロングランしてるだろうから、また見に行きたい。

                リピーターが出るのも分かる気がします。推しの生き様が本当にカッコイイんだから。

                ……続きの映像化、どうなるんでしょうね。たぶん制作するとは思うんですが。

                 

                2020.09.21 Monday

                劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン (ネタバレ感想考察注意)

                0

                  こんばんは、Ticoさんです。

                  今朝起きて、今日のブログはどうしようかなと思っていたんですが、

                  本日見てきたこれを置いて他に何を語るべきかと考えまして。

                   

                   

                  というわけで本日のブログ記事は

                  劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

                   (ネタバレ感想考察注意)」

                  と題してお届けします。ネタバレ注意です。

                  Ticoなりに感動した点、ひっかかった点、そのうえで「こうじゃない?」と

                  考察してみた内容などなどを含めて書いてますので、未見の方はご注意を。

                   

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                  まずは、あの悲惨な事件があったにもかかわらず、そしてコロナ禍による公開延長も乗り越え、

                  上映にこぎつけたこと、京アニを応援するファンとして誠に嬉しく思います。

                  公開三日目の本日も映画館は満席状態で、スクリーンで繰り広げられるドラマに

                  始終あちこちからすすり泣きが聞こえていました。

                   

                  なんというか、目とか顔とかの表情の演技がすごいんですよ。

                  まばたきとか目つきとか自然に描かれつつ、何を思っているかパッと察せる。

                  京アニ健在ここにあり、という感じでした。

                   

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                  さて、ストーリーラインの割とネタバレになることはご容赦ください。

                  今回の「劇場版」ですが、お話の導入と締めはヴァイオレットその人ではなく、

                  デイジー・マグノリアという女性になります。たぶん大学生ぐらい?

                  マグノリアって名前でピンと来られた方は鋭い。

                  TVアニメ版10話の少女、アン・マグノリアのお孫さんでございます。

                   

                  ……つまりですよ、映画の「現代」において、ヴァイオレットは間違いなく

                  とっくに亡くなってるし、それこそ「歴史的遠近法の彼方において古典となった」とも言えます。

                  (同じ京アニ作品の「氷菓」での言葉がなんかぴったり来ますね)

                  デイジーの祖母が受け取った手紙を代筆したドールを訊ねる形でヴァイオレットの物語が描かれます。

                   

                  それで、「過去」のヴァイオレットのお話は二つの筋が絡み合っています。

                  ひとつはユリスという病気の少年の手紙を彼女が代筆してあげたお話。

                  もうひとつは彼女が慕うギルベルト少佐を探しだすお話です。

                  前者が「プロのドールとしてのヴァイオレット」だとすると、

                  後者は「癒えない傷と消えない想いを抱えた少女のヴァイオレット」

                  この二つは一見無関係にみえて、クライマックス手前で緊張感がピークになって重なり、

                  ヴァイオレットは「仕事を取るか私情を取るか」の選択を迫られます。

                  まあ、結果的にライデンに残っていた会社の仲間がなんとかしてくれるんですけどね。

                   

                   

                  ■ギルベルトさん凹みすぎ問題

                   

                  んで、問題はギルベルト少佐生きてましたよ。僻地の島で生きながらえていました。

                  まあ、彼が生きていて再会するんだろうな、とはイメージイラストや

                  グッズのポスターでだいたい察することができたんですが……

                   

                  ありがちな記憶喪失かと思いきや、ある意味でもっと深刻だった。

                  ギルベルト少佐、命を取り留めた後、国に帰らず軍にも戻らず誰にも連絡入れず、

                  ほうぼうをさまよって苦しんでいました。いじけていたと言っちゃそこまでですが、

                  兄のディートフリートが海軍に行っちゃったので、変に父親に従って陸軍に入ったくだりとか、

                  あとそもそもTV版の要塞突入戦でさっくり彼の部隊って壊滅してるよね、と思うと、

                  戦争が終わってなんか色々心が折れたのかなと思います。

                  真面目で優しい人ほどプッツンした時のダメージが大きいアレですアレ。

                   

                  ギルベルトを必死の思いで訊ねてきたヴァイオレットに、

                  こともあろうにギルベルトは「会えない、会いたくない」と言うのですよ。

                  まあ、ライデンで人気ドールになっている彼女の噂は伝え聞いていたっぽいので、

                  「もう君には俺なんか必要ない」とか言うんですよ。

                  ギルベルトさん、それ女の子には禁句や。言い換えれば、そこまで彼は凹んでました。

                   

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                  ■一応、愛する二人は結ばれるエンド

                   

                  最終的には島の爺ちゃんに諭され、わざわざ別ルートで島にやってきた兄にまでどやされ

                  そして意固地なところが緩んだ隙に、ヴァイオレットから「最後の手紙」ですよ。

                  決して美文ではない、たどたどしいけど懸命で誠実な「ありがとう」に、

                  さすがのギルベルトも「いじけてる場合じゃない」と思ったのか、

                  船に乗って島を離れかけていたヴァイオレットを追いかけ、

                  それに気づいた彼女が海へドボン、ギルベルトも海へダイブ。

                  波をかき分け、足を海水につかりながら、月明かりに照らされて想いを確かめます。

                  ここでありがちな飛びつくとか、キスとかではないのがポイントで

                  ヴァイオレットはなんか心情いっぱいいっぱいで言葉が満足に出ないし、

                  そんな彼女をあやすようにギルベルトが懸命に言葉をかけてそっと抱き寄せます

                  月明かりというのは「月が綺麗ですね」、つまり愛していますと懸けているのか

                  なかなかに美しい告白シーンでございました。

                   

                  で、お話は「現代」に戻り、デイジーの足跡辿りへと話を戻します。

                  ヴァイオレットが予約の仕事をすべて片づけた後、島の灯台に併設の郵便係を引き受けたこと、

                  その島はいまでは国内で一番手紙を出す人が多いこと

                  そして島が独自に発行しているCH郵便財団の切手には、

                  ドールだった頃のヴァイオレットが描かれていた、と。

                  最後にデイジーが映画冒頭で反発していた両親に想いを綴る手紙を書いて締めます。

                  エエ話ですなー。最後にヴァイオレットは伝承になったんやな。

                   

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                  ■いや待って、これ実は薄幸エンドでは?

                   

                  というところでハッピーで締めたいところなんですが、

                  色々演出を考えると幸福というにはなんか腑に落ちない部分がいろいろあります。

                   

                  1、映画冒頭の暗い道が続いていくシーン。

                   これラストでヴァイオレットが淡々と歩いていく様子が描かれています。

                   

                  2、そもそもギルベルトさん消息不明扱いのまま軍を脱走してるんでは?

                   それも隊長の責務を全部ほっぽり出していませんかコレ。

                   

                  3、デイジーが島を訪れた時の季節は冬。

                   島はちゃんと電化され、子供達もいるようですからさびれていませんが、

                   それにしたって「葡萄が実るような土地」でなんでわざわざ雪が積もる冬なの?

                   

                  順を追ってみていきますね。

                   

                  まず1なんですが、「過去」のライデンではヴァイオレットは売れっ子ドールです。

                  海の感謝祭の祝詞をかき上げたり、公開恋文で助力したドロッセルの王女が

                  嫁いでいった先での旦那の即位式の宣言文書いたり。

                  作中でもカトレアさんを抜いてトップの予約数らしい表現があります。

                  そんな「日向の道」を捨てて、暗がりを歩いていくというのは、

                  隠遁状態のギルベルトに寄り添って人生の残りを過ごすという表現じゃないでしょうか。

                   

                  ただ、そこで2が問題になりますギルベルトさん、仮にも少佐ですよ。

                  軍に戻って報告する義務があるし、なんだったら戦死した部下の遺族にお詫び書かなきゃいけない。

                  これって『幼女戦記』であの悪魔のターニャでさえちゃんとこなしていたし、

                  同じ全滅部隊でも『ヨルムンガンド』のバルメさんもちゃんと片づけていました。

                  そのあたり、ギルベルトさん全部ほっぽっているんですよ。指揮官失格ですよ

                  これ、島でひっそり生きるしかないじゃないですか。おおっぴらに人生謳歌できないですよ。

                  幸い、兄も協力してくれるでしょうし、へき地ゆえになんとかなるんでしょうが、

                  だとしても「ライデンの人気ドールだった女性」と公然と結婚とかできなかったのでは?

                   

                  そして3。デイジーがヴァイオレットの足跡を辿って島に着いたら季節は物悲しい冬でした。

                  花が咲き誇る春でもなく、青葉が豊かに繁る夏でもなく、果実が実る秋でもなく、

                  いっさいが静寂と寒さに閉じ込められた冬の季節なんですよ、わざわざ。

                  このあたり、結ばれた後の二人の前途がそんなに幸せではなかったことの暗示では?

                   

                   

                  ■CH郵便財団の独自切手の謎

                   

                  ここで気にかかるのが、島で独自に発行されているCH郵便財団の切手です。

                  島で皆に慕われたドールであるヴァイオレットの似姿を描いた切手です。

                  ぱっと見には「ああ、ヴァイオレットは島でも活躍したんだな」とも思います。

                  というか、Ticoも思いたい。そうあってほしい。

                  ですが、ですよ? 上に挙げたように日陰者になったギルベルトに寄り添って生きる以上、

                  特別切手なんて目立つことを彼女が望むでしょうか。

                   

                  ありうるとしたら可能性はひとつ。

                  直接の当事者が亡くなった後で、故人を知る人が故人を偲んで足跡を残してあげた、です。

                   

                  CH郵便社が国営化されて、財団になったら取り仕切っているのはホッジンズ社長でしょう。

                  ホッジンズが存命の間にヴァイオレットとギルベルトがポックリ逝ってしまい、

                  彼がかつての売れっ子ドールを偲んで島独自の記念切手にしたんじゃないでしょうか。

                  つまり、あくまで妄想ではあるんですが、ヴァイオレットとギルベルト、

                  あまり余生は長生きできなかったんじゃないかな、と。

                  二人とも大怪我していますし、差しさわりもあったでしょう。

                  互いが互いを支えにするような仲なら、片方がなくなったら残された方も程なく逝きそうです。

                   

                  デイジーが島を訪れた時にヴァイオレットの子孫は出てきません。

                  つまり二人は子供を残せないままに、割とぱったり亡くなったんじゃないでしょうか。

                  ホッジンズは売れっ子ドールだったヴァイオレットと、そして彼女が慕った親友を悼む意味で、

                  記念切手をわざわざ作ったんじゃないでしょうか。そんなふうに思えます。

                  そう考えると、二人が直接再会するまで空が曇天に包まれていたこと、

                  やっと想いを告げた時に照らすのが日光ではなく月光であること

                  そして謎めいた「薄暗がりの道を歩いていくヴァイオレット」が暗示するものが腑に落ちるのです。

                   

                   

                  ■それでも言おう、これはハッピーエンドだったのだ!

                   

                  映画のラスト、エンドロールが終わった後は、窓から差し込む日を浴びながら、

                  指きりの約束をするヴァイオレットとギルベルトのカットで静かに締められます。

                  キスでもハグでもないんですよね。そもそもこの二人、愛し合ってもいても恋人とは言い難い。

                  親子であり、師弟であり、戦友であり、兄妹であり、そんな色んな家族像の投影なんですよね。

                  だからこそ、人並みの幸せが得られたかは怪しいし、その生活も短かった可能性がある。

                   

                  けれども、愛を与え、愛を授かり、愛を伝えあった二人は確かに一緒になれました

                  その期間が十年でも数年でも一年でも、会えないよりは幾億倍も幸せだと言えましょう。

                   

                  そして、ヴァイオレットの記憶も言い伝えも歴史の彼方に埋もれようとしながらも、

                  しかし、彼女が代筆した手紙を通じて一人の少女が確かに手紙への想いを感じることになりました。

                   

                  ささやかな形ですが、ヴァイオレットの足取りに何かを思ったデイジーが、

                  電話ではなく手紙で両親へ感謝を伝えることになる……これはこれで綺麗な終わり方でございます。

                  作中で「手紙は想いを伝えることができる」ということは繰り返し触れられています。

                  かつての人気ドールの足跡は確かに残りましたし、その想いは消えることはなかったのです。

                   

                  ヴァイオレットとギルベルトの結ばれ方は必ずしも万人に祝福されるものではなく、

                  そのあたりを事前のイメージイラストやグッズイラストから思い描いていくと

                  なんか腑に落ちないのでは、と思うのですが……とはいえ、これはできる限りのハッピーエンドですよ。

                   

                  ……と、まあ、記事の後半2/3はなんかTicoさんの愚にもつかない妄想になりました。

                  ただ、美しい映画ですが、単純に「めでたしめでたし」でもないのは確かです。

                  お話の筋立ての綺麗さで言えば、ギルベルトは亡くなったままがよかったでしょう。

                  それでも彼女達が結ばれるとしたら、月光の祝福は運命のせめてもの慈悲だったのかもしれません

                   

                  なんだかんだ書き連ねてみましたが、

                  このあたりは観客に想像の余地があろうかと思います。

                   

                  何度も見返すと意外と色々な仕込みがありそうですね。

                  それはそれで良い映画の証でございます。実に素敵な、素晴らしい作品でした。

                   

                  2020.02.24 Monday

                  彼らは生きていた They Shall Not Grow Old

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                    おはようございます、Ticoさんです。

                    まず、本日のブログ記事、映画レビューなんですが、

                    ちょっともろもろあって、ネタバレがかなり含まれていることをご容赦ください。

                    ただ、ネタバレがあるからといっても、見た時の衝撃は少しも損なわれない内容であることも

                    Ticoが太鼓判を押すものであります。

                     

                    さて、今日取り上げるこの映画、正直見終えた直後は

                    「なんかえらいもん見たから、もう少し心の整理がついてから記事にしよう」

                    と思っていたんですよ。

                     

                    ただ、この映画で魂をもっていかれたというか、

                    メンタル的に相当消耗したらしい様子が土日でございまして。

                    しかも時間が経つにつれ、整理がつくどころかぐるぐる思考が回ってきて、

                    「これはどんな形であれ早めにアウトプットしたほうがいい」との判断に切り替えました。

                     

                    考えてみれば当たり前だよ、いわば「戦場を撮ってきたドキュメンタリー」だもの。

                    この世の中でも矛盾と不条理がぎゅうぎゅうに詰まっている時と場所の映像なんだから、

                    整理がつくもなにも理を通してわかろうとするのがそもそも無理なんだよ。

                     

                    というわけで、前置きが長くなりましたが、本日は映画レビュー。

                     

                    彼らは生きていた」(They Shall Not Grow Old)でございます。

                     

                     

                    監督はかの「ロードオブザリング」を撮ったピーター・ジャクソン。

                    BBC放送と英国戦争博物館の協力のもと、第一次世界大戦の西部戦線での

                    英軍兵士の様子を撮影したカメラ映像を現代の技術で補正して、

                    自然な色合いにカラーにし、動きも自然なようにして、効果音やセリフもつけて、

                    あと映像にあわせて(あるいは敢えてずらして)帰還兵士の証言が流れるというもので。

                     

                    そう、原題の「あいつらは老いることがなかった」とは、

                    もう年老いた帰還兵からみて、戦死した仲間たちを思ってのことらしいのですよね。

                     

                    さて、この作品、かなりの編集や加工が入っているので、その意味では

                    「映像作品としての映画」とみるべきなんでしょうが、内容はもはやドキュメンタリー

                    第一次大戦の開幕から始まって、その当時のフィルムが白黒で流れ、

                    戦役に志願した人たちの証言が次々に流れてきます。

                     

                    高揚感、あるいは冒険心を持って志願し、兵士としての訓練を受け、

                    訓練のつらさに根をあげながらもどうにか一人前となって戦線へ送られ、

                    最前線に近づくにつれ荒廃の色濃い光景に「とんでもないところへ来たんでは」と思い始め。

                     

                    そして(これはおもむろにネタバレになってしまって恐縮なのですが)、

                    彼らが「戦場に入った」と同時に、それまで当時の白黒フィルムで延々流れていた映像が、

                    不意に、ごく自然に、それでいて唐突に、現在の技術で復元されたカラーの映像に切り替わります。

                     

                    このタイミング。圧倒的にスクリーンの向こうに、「彼らが生きている」感。

                    歩兵と馬が戦力のメインだった時代の戦争を、見事に現在によみがえらせています。

                     

                    塹壕の様子。もっとマシなものかと思っていましたが、

                    古代ローマ人が見たら「これが千年後の子孫たちの技か!?」と嘆きたくなるような粗末な代物で。

                    その塹壕で行われる戦場生活は、とんでもなくキッツイもので過酷で。

                    大英帝国というその当時で最先端の文明社会から一気に蛮族の生活にまでなって、

                    そして絶え間ない砲撃にさいなまれ、敵の攻撃を見張り続ける、緊張感の絶えない前線の様子。

                    塹壕だからと安心はできず、油断すると狙撃兵に頭を撃たれたり、砲弾の破片で負傷したり

                     

                    後方に戻ったら戻ったで、前線のストレスを解消するかのごとく、

                    もらった給与をぱーっとつかって憂さを晴らす。当たり前だよ、次また来れる保証がどこにもないんだもの。

                     

                    クライマックスは敵塹壕に突撃をしかけて強襲を行う場面。

                    さすがにこのあたりは映像が残ってなくて再現イラストが次々と差し込まれるのですが、

                    かえって真に迫った迫力があり。流れる証言が生々しいのもあるでしょう。

                     

                    そして塹壕でさんざんに血の猛るままに敵兵を殺して回ったあとで、

                    捕虜をつれてもどってくると、なんか敵の捕虜と仲良くなったり。

                     

                    「話し合ってみるとドイツ兵はいいやつばかりだった」

                    「お互いにこの戦争は無意味だと話した」

                     

                    ……いや、じゃあなぜ戦争になったの? なんで兵役に志願して人を殺したの? とは思いますが、

                    おそらく意図的に映像と証言の内容をずらしている演出もあり、証言もいろんな人のものを

                    拾ってるので、次々にいろんな声が入ってきまして、もーう頭ぐーるぐる。

                     

                    締めは終戦を迎えて、兵士たちが戦場をあとにして復員していくのですが、

                    戦場を去ると同時にカラー補正されていた映像が再び白黒の当時のフィルムに戻っていきます。

                    「白黒こそ当時のリアルだったからなのか」あるいは「兵士たちにとって戦場こそリアルだったのか」

                    ともあれ、帰国した兵士たちは、戦場へ行かなかった人たちから白い目で見られたという嫌な後日談がつき。

                     

                    最後に、「第一次大戦の西部戦線で大英帝国の市民100万人が死んだ」という、

                    そっけなく、それでいてとんでもない死者数を字幕で出して締めになるという……

                     

                    見終わった感想は同行した友人ともども、「えらいものを見た」でした。

                    「えらいものを見た」といえば、映画「ジョーカー」や「この世界の片隅に」もえらいものでしたが、

                    あれらは一応フィクションであって、物語であって、構成がみえて、そこに理を通して解きほぐすことができます。

                     

                    今回のこの映画は、まあ当たり前なのですが、「戦場を切り取ってきて、ごろっとおいてみたよ」って感じで、

                    その中には矛盾と不条理が詰まっていて、人間の理性と蛮性が当たり前のように並んでいて

                    単にいいとか悪いとか、そういうものを通り越して、それが戦場だったんだな、という、

                    飲み込みがたいけど、そのまま飲み込まざるをえないものがありました。

                     

                    漫画家の速水螺旋人先生が「見に行くなら1917を先に見た方がいい」とツイートされていましたが

                    まさしく、で。いま思い返すと『1917』は美しく描かれていました。

                    『彼らは生きていた』で活写される世界は、控えめにいって地獄絵図と同義としかいえないものです。

                     

                    まあ、それにしても、こんな映画みたら、そりゃあ疲れるわ。当日夜からダメージ出るわ、と思うのですが。

                    それでも、Ticoは敢えて言いたいです。ぜひ、この作品はスクリーンで見てもらいたいです。

                    上映館は少ないし、見て面白いかというと、フィクション的爽快感はないし、

                    むしろ100分間シアターに閉じ込められて逃げ場がない状態で鑑賞してほしいです。

                    かなり魂ゆさぶられますし、終わった後で単純な善悪二元論で割り切れない戦場が心に焼き付くと思います。

                     

                    最後に。英軍兵士たちはほぼすべて男性たちだったわけで、その意味では戦場生活は男の世界、

                    いわゆる部活とか、男子校とか、そういうテイストがどっかにあったりするのですが、

                    「その男の世界に女性が放り込まれる結果になったら何を経験するのか」っていうのが

                    いまコミカライズ版が話題の『戦争は女の顔をしていない』であります。

                    (このことをくだんのコミックを貸した、映画鑑賞後の友人に指摘すると、めっちゃイヤそうな顔してましたが)

                     

                    『戦争は女の顔をしていない』もいずれブログで取り上げたいですね。

                    これも速水先生の言葉なんですが、コミックで分かりやすくなった半面、

                    原著の文字だけの世界から立ち上ってくる「どうしようもない、いたたまれない感」はかなり減じていますので。

                     

                    なにはともあれ『彼らは生きていた』、ちょっと気合がいりますが、必見の価値ありですよ。

                    映画館に行けない人はこちらのYouTube配信のように、レンタルで見るという手もあります

                    おススメ……おススメなのか? いや、あえておススメしておきます。見ておくべき一本、という意味で。

                     

                     

                    最後、エンドテロップで監督からある人物への献辞が出るのですが、

                    それを見て、ピーター・ジャクソンがこれを撮った理由を知った気がしました。

                    あなたもまた、知りたかったのですね。

                    2020.02.22 Saturday

                    1917 命をかけた伝令

                    0

                      おはようございます、Ticoです。

                      今日は友人と映画に行く予定なのですが、一日雨降りと知って、いまから気分ブルーです。

                      いや、外出となると濡れるとかどうこうというより、傘の始末どうしたもんかと毎回悩むので。

                      なんか力場フィールド作れるまでは人類は傘から解放されないんだろうなあ……

                       

                      さて、映画といえば、先週末に見に行ってきた

                      1917 命をかけた伝令』の感想を書かねばなりますまい。

                       

                      ゴールデングローブ賞で最優秀作品賞、アカデミー賞で撮影賞をとったこの映画、

                      舞台は第一次世界大戦の欧州戦線、英軍の伝令が主人公となる作品です

                       

                       

                      この映画の特筆すべきポイントは全編ワンカットに見えるように撮影されてるということ。

                      主人公に密着する視点でカメラが回され、塹壕の中をいく、戦場を駆ける、兵士の姿を

                      臨場感というより没入感たっぷりで展開されます。

                       

                      観客は主人公に密着して見守る視点になるのですが、近い感覚としては、

                      TPS(三人称視点シューティングゲーム)などでしょうか。

                      たとえば「バイオハザード4」みたいなたとえが古いなア、おい)。

                      ただ、スクリーンを舞台と考えると、視点の端からモブなどが登場するシーンなどは

                      むしろ演劇のような印象もあり、なにか「映画では見たことない感覚」になること請け合いです。

                       

                      あと面白いのは、作中時間ではほんの一日の出来事でしかないんですが、

                      その中で主人公の兵士は本当にいろんな波乱に襲われるので、見ながらハラハラしどおし

                      一見静かなシーンでもどこから敵に襲われるかわからないので、先に挙げた没入感もあって

                      緊迫度合いがハンパないのです。

                       

                      それだけに、最後のシーンで主人公の兵士が取った行動を見て、

                      本当に安堵するのと同時に、いま一度タイトルの「1917」というワードを思い起こすと、

                      こんな光景やドラマはあの時代あの場所では日常茶飯事だったのだろうな、と。

                      そりゃあ戦地帰りの兵隊さんが心にトラウマもっちゃうわコレ。

                       

                      ちなみに。

                      この作品はどうも実話をもとに脚本を書き上げた形で、ほぼフィクションではあるんですが……

                       

                      実はいま別の映画で第一次大戦の「ドキュメンタリー」をやっていまして、

                      それが『彼らは生きていた』という映画であります。

                      今日見に行く映画というのが実はコレでして、見比べて「物語」と「事実」の違いを

                      味わってきたいと思います。

                       

                       

                      YouTubeにあがっている『1917』の3分半の本編映像。

                      ほんのさわりですが、臨場感と没入感をちょっと見てみてください。

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