われら銀河をググるべきや

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    われら銀河をググるべきや―テキスト化される世界の読み方 (ハヤカワ新書juice)
    われら銀河をググるべきや―テキスト化される世界の読み方 (ハヤカワ新書juice)
    新城 カズマ

    なかなか壮大なような意味不明なようなタイトルですが、
    ここでいう銀河とは「グーテンベルグ銀河」、
    つまりは既存の出版物そのものを指しているようです。
    ちなみにタイトルはある作家の自伝のパロディです。

    著者はSF作家の新城カズマ氏。
    「蓬莱学園」のグランドマスターとしての経歴が
    Ticoはよくおぼえてますね。小説面白いです。

    さて、グーグルが絶版書籍を電子化して検索可能にして
    公開するよーと言った時に氏が色々調べ始めて、

    「これってどういうことだろう?」
    「出版業界にどんな影響があるんだろう?」

    という、作家としてはごくごく当然な疑問を持って
    ブログ上で考察を始めたことがきっかけとなっています。

    電子化に対する米国での動き、あちこちの意見などを引用しつつ、
    SF作家ならでは考察を進めていきます。途中おちゃらけながらも
    氏が考えるビジョンはなかなか鋭くて、そしてユニーク。

    特にGoogleビジネスの本質を見抜いているのはさすがというべきか、
    ユーザーは無料で情報を検索して得ているようにみえて、
    実はそうではない。サイトの広告面価値に影響を与えることで
    結果としてGoogleのために働いているのだ、という視点は
    なかなかにうならされるものがあります。
    あるいは氏も『フリー』を読んでいたのか。

    出版物の電子化というものを一法人にゆだねるべきかということを
    氏は懸念しているようですが、そもそもインターネットが出た時点で
    こうなる動きは避けられなかったのだと考えているようです。

    現在の著作権は17世紀に考案されたもので、
    急激な変化を起こしている現在のデジタル社会についていけず、
    「近代」に考案された「個人」と「所有」の概念を見直す時期に
    来ているのかもしれないと結論付けています。

    Googleの出現ですべての情報が検索可能になり、
    あらゆる情報や知識が公共財になり、
    人類文明が一個の「有識の共和国」になる……
    絵空事のようにみえてネットの発達を考えると
    あながちホラとも思えない考察です。

    近代に登場した国民国家というものの限界がきているのでは
    という考えはTicoも最近持ち始めていたのですが、それは
    経済とか環境とかいった切り口でのこと。

    デジタル情報の観点から国民国家の限界を
    見抜いたくだりはなかなか刺激的でした。

    まあ、実際には、Googleの書籍検索化にはあちこちで反発もあるようで、
    一方でGoogleの代理人もあちこち駆け回ったり、新しい出版のあり方を
    巡ってあちこちで駆け引きが行われているようです。

    ひょっとしたら、いまの我々は文明的な特異点を迎えつつある、
    あるいはとっくに通り越したのかもしれません。
    そんなことを考えさせる一冊でした。

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