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2020.04.24 Friday

スオミさんはお困りです ep.8〔後編〕

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    はーい、Ticoです。

    こちらは本日アップのドルフロファンジンノベル、

    「スオミさんはお困りです」ep.8の後編となります。

     

    ここから見ちゃって「よっしゃ、読んだろか」というありがたいお客様は

    こちらのリンクから前編へお越しくださいませ。

     

     

    (後編本文は長いので折り返し〜)


     

    「ヴィーフリ、退きなさい! 電磁パルスを使います!」

     G36が点射で援護しつつ、叫ぶ。

     迫りくる異形のマンティコアと、その足元から這いまわってくるダイナゲートの群れに銃弾を浴びせつつ、ヴィーフリは叫び返した。

    「退けるなら、とっくにやってるよ!」

     叫びながら短機関銃を連射するヴィーフリ。

     撃っても撃っても、ダイナゲートが押し寄せてきて、尽きない波のようだった。

    「まったく、あなたは本当に世話が焼けますね」

     舌打ちまじりにG36が声をあげて――電磁パルス弾を放り投げた。

    「へっ!?」

     驚くヴィーフリの頭上高くを銀色の円盤が宙を飛び――ダイナゲートたちの群れの奥へと放り込まれる。直後、青白い火花が散ってダイナゲートの群れとマンティコアが悲鳴のような電子音をさせながら、機能を止めていく。

    「ナイスコントロール!」

    「おしゃべりは後です」

     にまっと笑ったヴィーフリの横に躍り出て、G36がアサルトライフルを立て続けに撃つ。

     おしよせていた群れの先端のダイナゲートが次々に残骸に変じた。

     ひととおり掃討した後、ヴィーフリが声をあげる。

    「とりあえず、こっち! 離れないと!」

     急いで駆けだすヴィーフリに続いて、走りながらG36が訊ねる。

    「当てはあるのでしょうね?」

    「わかんないよ! こんな通路、図面にないんだもん!」

     走りながらヴィーフリが泣きだしそうな声をあげる。

    「くっそー、もうマガジンが残り一本とか!」

    「さすがに敵が多いですからね――それにしても、図面に無い拡張工事の通路とは、なんとも悪意に満ちたダンジョンです」

     G36がぼやきながら駆ける。

     走りながらマガジンを交換し――普段は冷静なメイドの目が不安げに揺れる。

    「こちらも残弾があと一本ですか。マズいですね」

    「あーん、スオミ、早くして〜!」

     二人で声を交わしながら、通路の角を曲がった途端。

    「うあッ!?」

    「これは――困りました」

     二人は呆然と立ち尽くした。

     突然、運命を塞ぐかのような、まさに行き止まり。そして、二人の背後から、かさかさと這いまわる音と、巨大な脚がゆっくり歩みを進める音が聞こえてくる。

    「ここまで、ということですか……」

     だらりと銃を提げてG36はつぶやいたが、

    「フン、そんなに諦めがよくていいの?」

     ヴィーフリが顔をしかめて、肘でつついてみせた。

    「あいつらが来るまでまだ少し余裕があるよ。通路に罠を仕掛けて、曲がり角を遮蔽物にして持ちこたえよう。どれぐらい稼げるかわからないけど、なんとかなるかもしれない」

     まだ声に張りのあるヴィーフリの言葉に、メイドはふっと笑んでみせた。

    「本当におかしなものです。ここで命を落としても、シグナルさえ送れば、基地のメンテナンスベッドで目を覚ます。人形にとって実に簡単な選択なのに、それを選ぶことが不可能とさえ判断しています……だいぶご主人様に毒されていますね」

    「どんな時も命をあきらめるな、って指揮官の口癖だし、それに――」

     ヴィーフリが少し頬を染めて、そっぽを向きながらつぶやいた。

    「――スオミなら、もっとひどい状況でも諦めないだろうし」

    「負けたくはない、ですか」

     メイドの言葉に、こまっしゃくれた少女がこくりとうなずく。

     G36はふうと息をつくと、大きく目を開いた。

     普段の険しい眼差しが緩んで、穏やかな笑みがこぼれる。

    「もちろん、それはわたしも同じですよ」

    「なんたって、〔指輪の乙女〕だもんね」

    「ええ――その名に恥じることなし」

    「そして、その誓いにもとることなし」

     二人は顔を見合わせて不敵な笑みを浮かべると、銃をカツンと打ち合わせた。

     暗がりの向こうから、破滅の足音が確実に近づいてくる――

     


     

    「これで……売り切れです!」

     コンテンダーが叫びながら、電磁パルス弾を放り投げる。

     銃弾で窓が撃ち抜かれて随分見通しのよくなったエントランスから、外で電光が散るのが見えた。青白い火花と共に、じわじわと寄ってきていたダイナゲートと歩く人形の骸がぱたりと倒れるが――すぐに、その残骸を踏みしだきながら、別の波がゆっくりと押し寄せてくる。

    「なによ? もう店じまいなわけ?」

     突出した個体を単射で撃ち抜きながらFALが声をあげる。

    「お客さんはまだまだお越しなのに――おおっと」

     軽口をたたいたFALがカウンターに頭を引っ込める。

     さっきまで彼女の頭があった空間を、銃弾がいくつも空を裂いていった。

    「あー、もう。たまに武器持ってるやつがいるのが鬱陶しい!」

    「セール品は品切れですが、定番商品なら在庫はありますよ」

     コンテンダーはそう言いながら、ひときわ太い銃弾を装填した。

     それを目にして、FALが目を丸くする。

    「あきれた――カスタム強装のマグナム弾?」

    「ええ。正面から撃っても、背中のダイナゲートまで抜けます」

     そう言って、コンテンダーがカウンターから顔を出す。

     FALが続いて銃を構え、単射で確実にダイナゲートを牽制し――その隙にコンテンダーの狙いすました一撃が、銃を持った人形を撃ち抜く。通常より遥かに威力の高い銃弾を受けて、人形の胴に大きな穴が穿たれ、背中のダイナゲートごと崩れ落ちる。

    「おみごと」

    「連射が出来ればと思いますよ――危ないっ」

     二人は慌てて頭をひっこめた。

     先ほどに数倍する銃弾が空を裂いていく。

     悲鳴のような風切り音に顔をしかめながら、FALが険しい顔で言った。

    「ちっ、銃を持ったやつが増えてきてる――でも、一気に押し寄せないのはなぜ?」

    「生け捕る気ではないでしょうか。ワイルドハントがやっていたことを考えれば、スオミだけでなく、わたし達のメンタルモデルも欲しがって不思議はないかと」

    「まあ、なんてごうつくばりかしら」

    「まったくです。『欲張る鷹は爪が抜ける』と教えてやりましょうか」

    「どのみち、〔指輪の乙女〕が降参するわけにはいかないものね」

     銃弾が空を裂くのをにらみながらつぶやくFAL

     その彼女に、コンテンダーが訊ねた。

    「そういえば、作戦前のあの合言葉、誰の発案なんですか?」

     さりげない問いに、FALは少しばつの悪そうな顔をして答えた。

    「……わたしよ」

    「あなたがですか?」

    「スオミったら、作戦前の景気づけが苦手なのよ」

     すっと目を細めながら、FALは答えた。

    「アドリブの効いた訓示とか、とことんダメ。でも締まらないからどうしましょうって相談受けて、考えてあげたの」

    「――ふむ、なにか元ネタがおありで?」

    「どこかで見たフレーズかもだけど……自分で考えたものよ」

     そこまで言って、FALはちらとコンテンダーを横目で見た。

    「変だと思う?」

    「いえ、やはりあなたは副隊長だと、改めて思いました」

     そう言って麗人がすっと手を差し出す。

    「最後まで諦めないで戦いましょう。〔指輪の乙女〕なのだから」

     FALが不敵に笑って、その手を握る。

    「あいつらにくれてやる命も誇りもないものね。だから……」

    「……ええ。その名に恥じることなし」

    「そして、その誓いにもとることなし……もう少し踏ん張ろう!」

     銃弾が途切れた間隙を縫って、二人がカウンターから身を乗り出し、銃を撃ち放つ。

     だが、その奮戦をあざ笑うように、包囲の輪はじりじりと締まっていく――

     


     

     スオミは真っ白で、だだっ広い部屋に足を踏み入れていた。

     まるで永久凍土を固めたような作りで、心なしか部屋の中も冷えているようだった。

     壁は一面に細かい格子で区切られたようになっており、いずれも真ん中に白いランプが灯っている――だが、奥の壁の一か所に、緑のランプが灯った区画があった。

    「……あれですね」

     スオミはつぶやき、奥の壁へと駆け寄っていき。

     緑のランプに手を伸ばそうとして――

     突然振り向くと、天井に向けて短機関銃を撃ち放った。

     銃弾に追われながら、何かのゆがんだ影が天井を、壁を這いまわった。

    「……クハハ! クハハ! さすがだ……気づいていたのか」

     哄笑と共に光学迷彩が解けていき、異形が姿を現す。

     継ぎはぎの人形。どうつなげたのか、六本の脚と四本の腕を生やしている。

     躯体の四肢はまちまちの人形のもので、腕に握られた銃はそれぞれ異なる。

     スオミは、腕の一本を睨みつけた。

     いささか傷だらけになった白皙の肌の右腕。

     その手の薬指に輝く、銀の光。

     それだけ認めて、少女は険しい目で異形を睨みつけた。

    「……ワイルドハント。道中で遭遇しなければ、ここだろうとは予測演算していました。天井からの奇襲はあなたの悪い癖ですね。知っていますか、バカは高いところが好きだそうですよ」

     皮肉ってみせた言葉に、異形は哄笑で応えた。

    「クハハ! ならキミは? たかが人間一人の命のために、のこのこと罠にかかりにくるキミは!」

    「――さあ、それはどうでしょう?」

     スオミは不敵な笑いを浮かべた。

    「あなたにとっても、わたし達の進入路は予想外だったんでしょう?」

     少女の指摘に、ワイルドハントはうなり声をあげた。

    「ウグゥ……なぜだ。なぜそう思う」

    「あなたの銃、リンケージが済んでいませんよ。調整中に慌てて出てきたんでしょう? そうでなければ、そのライフルでわたしを狙撃したはずです」

     スオミの言葉に、ワイルドハントは苛立たしげに銃を振り回した。

    「だからどうした! 射撃プログラムは積んでいる! ボクを甘く見るな!」

    「その言葉、そっくりお返しします――わたしを見くびらないでッ」

     不敵な切り返しに、ワイルドハントが呻きながら四挺の銃を構える。

     スオミは、キッと表情を引き締めた。

     四つの銃口が火を噴く寸前。

     戦乙女は戦術反応回路に火を入れ、大きく跳躍して異形に迫った――

     

     

    ep.9へ続く

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