<< Ep.2 困った部下への処方箋 -中編- | main | Ep.2 困った部下への処方箋 -後編- >>
2020.06.22 Monday

Ep.2 困った部下への処方箋 -前編-

0

    おはようございます、Ticoさんです。

    ドルフロファンジンノベルのアップ日でございます。

    いわゆる【おねショタ】に挑戦の

    「仔犬指揮官はお姉さんが苦手です」、続きお待たせしました。

     

    本日は第2話、「困った部下への処方箋」でございます!

     

    pixivでは二分割でアップ済みですので、こちらからどうぞ

    Blogでは記事の文字制限の関係で三分割アップです。

     

     

    殉職した指揮官、エヴァン・ハワーズの最期に居合わせたために、

    心に傷を負ってまともに戦えなくなった戦術人形、AA-12。

    着任したばかりの少年指揮官コリンは、彼女をなんとかしてやりたいと考えるのだが……

     

     

    【作者から】
    お待たせしました、おねショタチャレンジの第二話です。

    冒頭、AA-12がちょっと情けないことになっていますが、

    このネタはTwitterでいつのまにか流れたダジャレネタが元です。

    「なぜそうなった?」というあたりに、

    意味付けや克服のエピソードを見出すのはTicoの悪癖ですね。

     

     

    (本編は折り返し〜)


     

     コリン・ハワーズかい? うん、よく覚えているよ。

     

     いまでこそこうやって戦術人形の教官をやれてるわたしだけどさ。

     過去にはまったく戦えない時期があったんだよ。

     

     おっかしいでしょ。

     銃と烙印システムで結ばれたはずの戦術人形がだよ?

     

     後から聞いた話、人形のメンタルモデルやマインドマップは「偶然できあがった生態系のようなもの」だとかで、設計者のペルシカ博士ですらスッキリ説明できないところがあるんだって。なんか不思議な話だよね。

     

     ああ、ごめん――話がそれた。

     ちょっとさ、飴舐めていい? 糖分取らないと頭回らなくてさ。

     

     それでええと……そうそう、“仔犬のコリン”くん。

     はは、B122基地での皆からの愛称だよ。

     

     やっぱり「ハワーズ指揮官」ってのは、あの子の伯父さんを指すからさ。

     副官どのは「コリン指揮官」と呼んでいたけど、わたしたち下っ端の間じゃ、「コリン」って呼び捨てたり、「仔犬くん」とか呼んでたねえ。特にからかった時の不平の口ぶりが、それはもう仔犬がキャンキャン鳴いてるみたいでさ。皆よけいにからかうんだよな。

      

     ただ、実際、[[rb:戦術人形 > オンナノコ]]達はちょっと恥ずかしかったんじゃないかな。

     あんな子供を、指揮官って認めるのがさ。

     でも、「良いことを言うマスコット」だと思えば、それも和らぐっていうか。

     

     あの子を一番いじっていたヤツなんか、人一倍そう思っていたんじゃない?

     本人は澄ました顔でなかなか認めようとしなかったし――

     ひょっとしたら、いまでも認めたがらないかもしれないけど。

     

     うん? そのコリン指揮官は有能だったか、って?

     

     素質はあったと思うよ。経験を積めればなおよかったね。

     けれど、そこは十歳の子供だから。至らない点はあるよ。

     

     でもね――やっぱり子供だったから、かな。

     どんなことにも一生懸命で、はぐらかすなんてしなかった。

     

     もし、コリンが……もっとオトナの指揮官だったら。

     わたしなんか、とうに基地の後方任務に回されていたか、さもなければ指先ひとつでメーカー送りでオーバーホールされて別人になっていたかもしれない。

     

     あの子はさ、そんなことはしなかったんだ。

     それは甘ちゃんかもしれないし、青臭さの表れかもしれない。

     けれど――お子様なりの考えと不器用さがあったからこそ、かな。

     

     あの時、B122基地に残った皆は、それで救われたんじゃないかと思う。

     


     

    『こちら“アグラロンド”。“イレギュラーズ”、聞こえますか?』

     野戦通信機から声が流れてくる。

     まだ幼く、どこか舌足らずなボーイソプラノ。

     

     彼の声を聞いて、銀髪金瞳の乙女はまったく表情を変えない。

     だが、隣に並ぶ、目の下に隈を浮かべた美人は、びくりと肩を震わせた。

     

    「こちら“イレギュラーズ”。よく聞こえますわ、指揮官」

     通信に応答したのは第三の乙女。栗色の髪に鶯色の瞳の彼女は、普段は柔和な表情をこの時ばかりは凛と引き締めていた。

     

    『ありがとう。そろそろ会敵予想地点です。注意して』

    「ご心配なく、指揮官。十分前から警戒態勢に入っていますもの」

     答えながら、乙女は油断なく周囲を見回した。

     

     曇天模様の空に、靄が立ち込めていて、なかなか視界が見通せない。

     事前の情報よりも早めにフォーメーションを組んだのは、彼女の判断だ。

     

    『それはよかった……さすがです、スプリングフィールドさん』

     通信の声は、やや和らいだようだったが――緊張の色が拭えない。

    『くれぐれも気をつけて。増援に出せる部隊がいないんですから』

     

    「ええ。わたし達だけで始末をつけます。ご安心を――」

     そう、乙女が言いかけた矢先。

     銃声と共に、いくつもの風切り音が一行をかすめていった。

     

    「――エンゲージ! 数は十五ないし二十!」

     銀髪金瞳の乙女が叫ぶや、猛然と前へ駆けていく。

     

    「ああ、Vector、出すぎないで! AA-12、カバーに入って! 他の子は火力支援開始、前面に出た敵から優先して狙ってください!」

     スプリングフィールドが慌てて指示を出す。

     

     その彼女自身も、提げていたライフルを構えた。年代物の銃だが、よく手入れが行き届き、骨董品とあなどらせない鋭い輝きを放っている。かっちりした紺の上着に、ゆったりした白のロングスカート。その布地をひるがえし、片膝をついて射撃体勢を取る。

     

    「――ッ」

     息を吸って止めた瞬間に引き金を引く。

     靄の向こうで火花が散って、鋼の砕ける音が聞こえてくる。

     

     命中したことにスプリングフィールドは安堵した――だが、いまこの場の彼女は自分だけの戦果を気にしていればいいわけではなかった。

     

     前方の靄の中で、ぶわっと赤い光が地を這い、同時に銃撃が飛び交う音がする。

     タイミングをそろえて撃ってくるのは敵――〔鉄血〕の浸透戦術部隊だろう。

     それに混じって、小気味良い連射音が鳴っている。Vectorの短機関銃だ。先ほどの赤い光も彼女が焼夷手榴弾を使ったものだろう。敵をまず食い止める、という前衛の役目は果たしてくれているようだ。

     

     ならば、あとは“盾”を押したてて敵をすり潰すだけなのだが――

     呼応して射撃開始するはずの散弾銃の発砲音がいっかな聞こえない。

     

    「――AA-12、射撃しながら前進を。聞こえますか?」

     

     スプリングフィールドの呼びかけに、ややあって応答が入る。

    「……ゲホッ、ゴホッ……ご、ごめ。脚が、これ以上動かない」

     いまにも泣き出しそうな声。えずくような咳が言葉の端々に差し込まれる。

     

     通信に交じって猛烈な銃弾がシールドを叩く音が聞こえていた。

     彼女は盾役として、敵の攻撃を引き受けている――だが、それだけだ。

     亀のように守りに篭って、そこからまさに手も足も出ないでいる。

     

    「……うえ――うええええ……」

     不意に、通信回線に憚ることのない嘔吐音が流れた。

     それと同時に、ひそかなすすり泣きさえ混じって聞こえる。

     

     スプリングフィールドはため息をついて少し天を仰ぐと――

    「――指揮官。前進はこれ以上不可です。AA-12、ダウンです」

     

    『えっ、怪我でもしたのっ?』

    「いえ……あの、いつもの、です」

     乙女の声には、諦観と申し訳なさが同居していた。

     

    『ああ、そっか……やっぱり。うん、わかった。プランEに移行して――前衛のVector、後衛の火力部隊と連携して一時半の方角へ敵を追い立てて」

     

    『了解――もう、やってる』

     乙女の声が通信に乗るのと同時に、また前方の靄の中で赤い光が広がった。

    『スプリングフィールドさんはAA-12のフォローに入って、そこから援護射撃。彼女を守ってあげて……たぶん、また動けないでいるだろうから』

     回線の向こうの少年の声は、真剣そのもので緩みも呆れもない。もう何度目かのことであっても、事前に予想できていても、彼にとってはいつも緊張の本番なのだ。

     

     スプリングフィールドはきゅっと唇を締めると、立ち上がってライフルを携えて賭けだした。靄へ飛びこんでしばらくすると、シールドを展開した陰に隠れるように、白金の髪の乙女がうずくまっていた。

     そのすぐそばの地面には、彼女の“胃”にあったものが見た目の悪いスムージーと化してぶちまけられている。

     

    「ごめ……ごめん……やれると思った。今回は、大丈夫だと――」

     AA-12が顔をあげる。長い睫毛に、目の下の隈。トレードマークでお馴染みの目元が、この時はなおのこと憔悴さを増しているかのようだった。

     

     今度こそは何か言わねばと思っていたスプリングフィールドは、しかし、

    「……大丈夫よ。後衛への流れ弾はなかったもの」

     結局、気休めの言葉しか口にできなかった。

     

     戦えなかった乙女の、そのターコイズの瞳が不安に満ちて揺れるさまを目の当たりにして、どんな叱咤を放つことができようか。

     

     スプリングフィールドはただ黙って、同僚のそばで片膝をつき銃を構えた。

     

     所詮は“イレギュラーズ”なのだ。寄せ集めにすぎない部隊。

     

     とはいえ――

     基地でほぼ唯一の盾役に何かあっては、B122にとり大きな損害ではあった。

     


     

    「だめだよ、パダワン。大目に見て四十点だ」

     画面の向こうの女性は渋面を作りながら言ってみせた。

     

     精一杯のしかめ面なのだろうが、どうにも軽い印象なのはどこか飄々とした口調が改まらないためか、それとも紫の瞳が好奇と興味で煌めいているためか。

     

    「百点満点中の四十点だよ? スクールの教師なら赤点扱いだね」

     

     指南役のロロ――お隣のL211基地の主だ――にずばり言われて、コリンは唇を固く結んだ。瞳が揺れながらも画面から目をそらさないが、さりとて口を開いて反論も言い訳もできない様子だった。褐色の顔で短い眉をきゅっと寄せた面差しは、さながら「待て」を言われているレトリバーの幼犬のようである。

     

     代わりに答えたのは、傍らに立っていた副官のスプリングフィールドだった。

    「お言葉ですが、ローズ指揮官。B122の要撃部隊で対処が難しい場合、L211の管轄へ追い払って、そちらに対応をお任せするというのは事前の打ち合わせ通りです。それに、敵性をL211の担当戦区へ向かわせた際の、事前の連絡も、戦術データの提供も、問題なく行えています」

     

     鶯色の瞳の乙女が敢然と言ってみせるのに、ロロはふんと鼻を鳴らした。

    「そりゃあ、そのあたりの段取りは部隊を率いていた君がやったんだからね。遅滞も遺漏もないだろうさ。でも、私が問題にしてるのは、そこじゃあない」

     

     ロロが制御卓をぱちぱちとはじく。

     モニタの一角に表示されたのは、遭遇した〔鉄血〕のデータだ。

     

    「歩行戦車のマンティコアが出たのならまだしも、装甲型は無し。普通の歩兵型ばかり。まあ、強化歩兵のドラグーンあたりが群れで来たら厄介だが、そうでなし。数こそ多いけど、それでも二十体いかない程度――これぐらいなら、自分でお掃除してもらわないと困る」

     

    「……ごめんなさい」

     コリンがしょげた声で言う。

     するとロロが苦笑しながら、愉快そうに言った。

     

    「ンンンッフ! ごめんなさい、と来たか。なかなか子供らしい返事だネ。だけど、グリフィンの指揮官記章を代理でも付けている以上、私は君を同僚であり、指導すべき弟子として扱うよ――さて、パダワン。現状の問題は二つ挙げられる。分かるかナ?」

     紫の瞳が画面の向こうからじいっと見つめてくる。

     

     コリンがふうふうと息をつくと、オニキスの瞳で彼女を見つめなおした。

    「二つだとおっしゃるなら、たぶん次の問題だと思います」

     

     声は少し震えているようだったが、しかし、言葉によどみはなかった。

    「ひとつは、指揮を執るぼく自身のそばに、人形について詳しい人がそばにいないとダメだということです。おっしゃる通り、戦術人形は〔ウォー・チェス〕の駒のようにはいきません。今後も似たような時に、ぼくにアドバイスをしてくれる誰か、が必要だと思います――ええと、カンニングとか、そういう意味じゃなくて」

     

     少年の言葉にロロは是とも否とも言わない。

     ただ、じっと見つめて、少年がさらに言葉を続けるのを待った。

     

     コリンは、もうひとつ大きく呼吸してから、言った。

    「もうひとつは、やっぱりAA-12の問題です。彼女が満足に戦えるようになれば、要撃部隊のパフォーマンスは安定します。なにか悩みがあるみたいだから、それを解決してあげれば……えっと、その――どんな方法がいいかは、まだ思いつかないんですけど」

     

     そこまで言って、コリンは顔を赤くしてうつむいた。

     額にじわりと汗が浮かんでいる。そばで見守っていたスプリングフィールドがハンドタオルをそっと差し出すと、少年は小さく「ありがとう」と言って受け取った。

     

     褐色黒髪の少年が汗だくになって出した答えに、ロロはおごそかに言った。

    「よくぞ苦難に立ち向かったネ、若きパダワン。自分の至らない点を認めるのは難しい。そしてそれを埋める方法を考えることはなお難しい。なるほど、本部のヘリアンさんもこれなら、と思うはずだ――ンンン、実に悪くない!」

     

     モニタの向こうのロロはそう言うと、椅子に寄りかかった。

     画面越しに伝わってきた圧がそれだけでふわとやわらぐ。

     

    「そうだね、スプリングフィールドは下げて君のフォローに回ったほうがいい。現場での指揮は別のものに任せればいいだろう――前線に出せる戦術人形が減るが、そこはなんとか補充してもらえないか、私から本部にかけあってみるよ」

     

    「ありがとうございます……ローズ指揮官」

    「ンン、その呼び方は違うぞ。“師匠”、と呼びたまえ」

    「……あ、ありがとうございます――師匠」

     

    「よろしい――こら、そんな目をするな。ローズ指揮官、なんてかしこまって呼ばれるとこっちは背中がかゆくなってくるんだ。さて、若きパダワン、もうひとつの問題の方が重大だよ。戦えない戦術人形を戦えるようにする、なんてなかなか難題だ」

     

     ロロの言葉に、コリンは真剣にうなずいてみせた。

    「分かっています――なんとかします」

     

    「それだけじゃあ不安だなあ。当てはあるのかい? あるとしても、それまで君のところの要撃部隊を動かせないことになるよネ?」

     

     たたみかける師匠の問いに、幼い弟子がぐっと言葉に詰まった時。

     助け舟を出したのは、またしてもスプリングフィールドだった。

     

    「お意地が悪いですよ、ローズ指揮官……AA-12のことはなんとかしてみます。少なくとも前線に志願してくる時点で見込みはあります。あとは、最後の思い切りですから、そこはコリン指揮官だけでなく、他の人形たちも一緒になって解決すべき問題です。それと、要撃部隊が動かせない問題ですが――」

     

     その話題に触れた時、スプリングフィールドが嫣然と微笑んだ。

    「――そこはL211基地の秘密部隊におまかせしたいですわね」

     

     言われたロロは目を丸くしてみせた――口元はにやついていたが。

    「おや? 何のことだい、私にはトンとわからないなー」

    「おとぼけになるのでしたら、これをご覧ください」

     

     スプリングフィールドが制御卓を操作した。画面の一角に交戦データが地図上に表示される。B122の作戦区域から追い払われた鉄血部隊は、そのことごとくがL211の担当区域に入った途端にキルマークがついていた。

     

    「ああ、うちの戦闘報告を整理したんだね? 何が言いたいのかな?」

     ロロがにんまりと笑みながら訊いてみせるのに、答えたのはコリンだった。

     

    「……あの、ちょっと『早すぎるな』と思ったんです。この箇所に防衛部隊を張り付かせているのかと思ったのですが、それにしては境界ギリギリですべて撃破されています――師匠、もしかしてなんですけれど。うちの戦域に、ひそかに自分の部隊を潜り込ませているんじゃないですか?」

     

     コリンの言葉に、ロロは「ククッ」と笑みを洩らした。

    「ンンン、面白い話だが、直接その秘密部隊とやらを確認したわけじゃない。状況証拠だけでは何とも認めるわけにはいかないが――その謎解きは誰が考えたんだい?」

     

    「えっと……最初に『あれ?』と思ったのはぼくです。それをとっかかりにスプリングフィールドさんが関連する情報を整理してくれました」

     

     少年の回答に、ロロはしばし瞑目すると、つぶやくように言った。

    「なるほど――ハワーズの血はやはりハワーズ。そしてエヴァンのヤツ、本当に佳い女をのこして逝ったわけだネ。まったくもう……」

     ひとりごちてみせると、彼女が再び目を開いた。紫の瞳が、煌めいている。

     

    「よろしい。面白い謎解きを聞いた引き換えに、私もちょっと魔法を使わせてもらおう――そうだな、五日間だ。それまでは君の戦区で〔鉄血〕が出ても、いつのまにか狩られていることを約束しよう。ただし、守護者の加護は五日間だけだ。それまでにAA-12をしゃんとさせる方法を考えなさい」

     そう言うと、ロロは軽く敬礼し、その指をぴっと掲げてみせた。

     

    「若きパダワン。君はあたまの良い子だ。それに一生懸命でもある。それは得難い資質だ――自分を信じて課題に取り組みたまえ。では五日後、朗報を待つヨ」

     

     通信回線が切れて、モニタが灰色の画面に変わる。

     コリンは太く長い息を吐きだしながら、溶けるように椅子にもたれかかった。

     

    少年の頭をそっと撫でて、スプリングフィールドが言う。

    「おつかれさまでした――コーヒー、淹れましょうか」

     


     

     B122基地との通信を終えるや、ロロはたまらずうめいた。

    「だァーッ、疲れた! なんで毎度こんなに疲れるんだい!」

     

    「変な師匠キャラ作って臨むからですよ……アイスティにしておきました」

    「おお、さすが、わがパートナー! 分かっているネ!」

     グラスをそっと差し出す副官のスオミに、ロロはにまっと笑んでみせた。

     

    「……あの。横で通信聞いていましたけど、肝心かなめのことをちゃんとアドバイスしてあげなくてよかったんですか?」

     

    「ンン? だってさ、私の答えじゃ『とりまベッドでニャンニャン』だから――」

     

    「……えいっ」

    「――あだっ! ちょっと、金属トレイではたくの禁止!」

     

     亜麻色の髪の少女がため息まじりにぼやく。

    「あなたは色ボケだと思ってましたが、ここまで救いようがないなんて」

     

    「あのねっ、一例であって、つまりコミュニケーションなんだよっ。私ならそれが手っ取り早いというだけで、コリン君には彼なりに最適な方法があるだろう――私はオトナだが彼は子供だ。そしてこれは優劣の問題でなく、どう自分の属性を活用するかって問題に収束するんだよ」

     

    「ええと……子供であることを最大限利用しろ、ってことですか」

    「身も蓋も底もない言い方をするとそうなるネ」

     

    「あなたって本当に性根の悪い人なんですね……はあ」

     

    「あ、いまの切ないため息いいね。『そんな人に惚れちゃったわたしって何なんだろう』とか思った? 思っちゃったのかなー、スオミちゃーん?」

     

    「……えいえいえいえいっ」

    「だだだだ! 角は! トレイの角で連打は痛いから!」

     

    「――本当に、だいじょうぶなんでしょうか」

    「さあねェ。ま、『試みは予期したよりも容易なものだ』と言うでしょ?」

     

     

    中編へ続く

    コメント
    コメントする








     
    Calendar
       1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    262728293031 
    << July 2020 >>
    Selected Entries
    Categories
    Archives
    Recent Comment
    • 鹵獲! 鹵獲!
      Cattail (03/21)
    • 艦これファンジンSS vol.7 「アイドルと最古参のギグ」
      Tico (02/08)
    • 艦これファンジンSS vol.7 「アイドルと最古参のギグ」
      Lumina (02/08)
    • 艦これ クリスマスシーズン!
      Tico (01/11)
    • 艦これ クリスマスシーズン!
      Lumina (12/20)
    • 艦これファンジンSS vol.6「デライト・ティーパーティ」
      Tico (12/01)
    • 艦これファンジンSS vol.6「デライト・ティーパーティ」
      Lumina (12/01)
    • 艦これファンジンSS vol.5 「記憶を抱きしめて」
      Tico (10/26)
    • 艦これファンジンSS vol.5 「記憶を抱きしめて」
      Lumina (10/26)
    • 艦これファンジンSS vol.4 「命短し恋せよ艦娘」
      Tico (10/01)
    Recent Trackback
    Recommend
    吉田の日々赤裸々。3 ゲームデザイナー兼取締役の頭の中
    吉田の日々赤裸々。3 ゲームデザイナー兼取締役の頭の中 (JUGEMレビュー »)
    吉田直樹
    FF14の吉田PDの雑感コラム、最終巻! ゲームの裏側、仕事の作法、企画の考え方、そしてゲーム屋さんとしての生きざまなど、今回もうならせる内容です。
    Recommend
    吉田の日々赤裸々。2 プロデューサー兼ディレクターの頭の中
    吉田の日々赤裸々。2 プロデューサー兼ディレクターの頭の中 (JUGEMレビュー »)
    吉田直樹
    FF14のPにしてDである吉田直樹氏が四方山話を語る連載コラム! 開発の裏側から仕事のやり方、ゲーム業界への意見など、その話題は実にワイド!
    Recommend
    吉田の日々赤裸々。 『ファイナルファンタジーXIV』はなぜ新生できたのか
    吉田の日々赤裸々。 『ファイナルファンタジーXIV』はなぜ新生できたのか (JUGEMレビュー »)
    吉田直樹
    FF14を文字通り「建て直した」プロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏の連載コラム! FF14新生の裏側がこれ一冊でよくわかる?
    Recommend
    Recommend
    Eorzean Symphony: FINAL FANTASY XIV Orchestral Album【映像付サントラ/Blu-ray Disc Music】
    Eorzean Symphony: FINAL FANTASY XIV Orchestral Album【映像付サントラ/Blu-ray Disc Music】 (JUGEMレビュー »)
    ゲーム・ミュージック
    FF14を彩る珠玉のBGM、そのオーケストラコンサートの様子を収録の一本! あの思い出の曲が大迫力でよみがえる!
    Recommend
    ハヴ・ア・グレイト・サンデー(1) (モーニング KC)
    ハヴ・ア・グレイト・サンデー(1) (モーニング KC) (JUGEMレビュー »)
    オノ・ナツメ
    「ACCA13区監察課」のオノ・ナツメが送る、日常系ゆるやかストーリー。初老の作家と彼の息子、そして娘婿が織りなす、たのしい日曜日の過ごし方。
    Links
    Profile
    Search this site.
    Others
    Mobile
    qrcode
    Powered by
    30days Album
    無料ブログ作成サービス JUGEM