<< ハンティング | main | 写真展「20世紀の巨匠たち」 >>
2008.02.28 Thursday

ルポ 貧困大国アメリカ

0
    ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)
    ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)
    堤 未果

    民営化と自由主義の果てにあるものは何か。
    「自由化」が進むアメリカが抱える問題をまざまざと見せ付けてくれます。

    貧困層への食料配給では、安価で高カロリーなジャンクフードが優先され、
    結果として肥満化が進んでしまう現実。

    民営化による価格競争が引き起こした「サービスの質の低下」が
    引き起こしたハリケーン・カトリーナの惨事。

    盲腸の手術をしただけで132万円もの費用を請求され、
    一回病気をするとあっというまに中流層から貧困層へ転落してしまう悲劇。

    学校の学費を返済する経済的余裕がなく、
    やむをえず軍隊に入隊してイラクで心身とも深い傷を負う若者たち。

    その軍隊でさえも「民間警備会社」が仕事を請け負うようになり、
    世界中から集められた生活苦の人々が使い捨てにされる戦場。

    果てしない自由競争の追及の結果に待っているものを、
    本書では活写し、かつ、アメリカの後を追う日本に警鐘を鳴らしています。

    また本書から見えてくるのは、ブッシュ大統領の悪事ぶりです。
    彼が推し進めた政策がどれだけの人々を貧困においやり、
    また、その貧困ゆえに戦場へ向かわせたのか。
    そしてその影で儲けていたのはいったい誰なのか。
    ジョージ・ブッシュという人物が8年間も大統領の地位にあったのは
    アメリカにとって大いなる損失であり、それと同時に
    8年で辞めさせられるというのは幸福であるといえるでしょう。

    本書では最後の最後に、自由化による格差社会の拡大に抵抗する
    市民運動の数々を取り上げてます。結局は民主国家においては
    個人個人が自らの置かれた状況に関心を持ち、声を上げるのが
    欠くべからざる義務なのでありましょう。


    本書ではアメリカの貧困問題を取り上げています。
    また世情ではアメリカもいよいよ落ち目だと言われています。
    しかし、Tico個人は落ち目だとは思いません。
    たしかに曲がり角には来ているでしょうが、
    それでも声を上げ目の前の問題に立ち向かう市民があり、
    また一方でバラク・オバマという新風を吹き込むリーダーが
    出てくるあたり、アメリカの底力というのを感じます。

    ひるがえって日本ではどうか。
    本書を読み終えて、あらためて考えさせられました。
    コメント
    コメントする








     
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック
    堤未果著「ルポ 貧困大国アメリカ」を読んで
    堤未果さんの「ルポ 貧困大国アメリカ」を読んで、多数の日本人の認識の甘さが浮き彫りにされているとの感想を持った。 わが政府を中心にして日本人の間には、アメリカに付いていけば何とかなるという漠然とした思い入れが根底にあり、多数のヨーロッパ諸国とは異なり
    • 老人党リアルグループ「護憲+」ブログ
    • 2008/02/29 8:50 AM
    Calendar
         12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31      
    << March 2024 >>
    Selected Entries
    Categories
    Archives
    Recent Comment
    • 『防振り』 原作11巻レビュー!
      ヤマヤマ (08/21)
    • 劇場版 鬼滅の刃 無限列車編
      Lumina (11/01)
    • 鹵獲! 鹵獲!
      Cattail (03/21)
    • 艦これファンジンSS vol.7 「アイドルと最古参のギグ」
      Tico (02/08)
    • 艦これファンジンSS vol.7 「アイドルと最古参のギグ」
      Lumina (02/08)
    • 艦これ クリスマスシーズン!
      Tico (01/11)
    • 艦これ クリスマスシーズン!
      Lumina (12/20)
    • 艦これファンジンSS vol.6「デライト・ティーパーティ」
      Tico (12/01)
    • 艦これファンジンSS vol.6「デライト・ティーパーティ」
      Lumina (12/01)
    • 艦これファンジンSS vol.5 「記憶を抱きしめて」
      Tico (10/26)
    Recent Trackback
    Recommend
    吉田の日々赤裸々。3 ゲームデザイナー兼取締役の頭の中
    吉田の日々赤裸々。3 ゲームデザイナー兼取締役の頭の中 (JUGEMレビュー »)
    吉田直樹
    FF14の吉田PDの雑感コラム、最終巻! ゲームの裏側、仕事の作法、企画の考え方、そしてゲーム屋さんとしての生きざまなど、今回もうならせる内容です。
    Recommend
    吉田の日々赤裸々。2 プロデューサー兼ディレクターの頭の中
    吉田の日々赤裸々。2 プロデューサー兼ディレクターの頭の中 (JUGEMレビュー »)
    吉田直樹
    FF14のPにしてDである吉田直樹氏が四方山話を語る連載コラム! 開発の裏側から仕事のやり方、ゲーム業界への意見など、その話題は実にワイド!
    Recommend
    吉田の日々赤裸々。 『ファイナルファンタジーXIV』はなぜ新生できたのか
    吉田の日々赤裸々。 『ファイナルファンタジーXIV』はなぜ新生できたのか (JUGEMレビュー »)
    吉田直樹
    FF14を文字通り「建て直した」プロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏の連載コラム! FF14新生の裏側がこれ一冊でよくわかる?
    Recommend
    Recommend
    Eorzean Symphony: FINAL FANTASY XIV Orchestral Album【映像付サントラ/Blu-ray Disc Music】
    Eorzean Symphony: FINAL FANTASY XIV Orchestral Album【映像付サントラ/Blu-ray Disc Music】 (JUGEMレビュー »)
    ゲーム・ミュージック
    FF14を彩る珠玉のBGM、そのオーケストラコンサートの様子を収録の一本! あの思い出の曲が大迫力でよみがえる!
    Recommend
    ハヴ・ア・グレイト・サンデー(1) (モーニング KC)
    ハヴ・ア・グレイト・サンデー(1) (モーニング KC) (JUGEMレビュー »)
    オノ・ナツメ
    「ACCA13区監察課」のオノ・ナツメが送る、日常系ゆるやかストーリー。初老の作家と彼の息子、そして娘婿が織りなす、たのしい日曜日の過ごし方。
    Links
    Profile
    Search this site.
    Others
    Mobile
    qrcode
    Powered by
    30days Album
    無料ブログ作成サービス JUGEM